弁理士会に設置された機関、常議員会の決議は秘密でなく、公示されます(弁理士会会則第80条)。従って、昨日に開催された常議員会の決議を公表する行為は全く問題がないことを追記いたします。

常議員会の決議が公示された後、決議が秘密でないことは明らかです。

それでは、常議員会の決議がされた後、決議が公示される前、常議員会の決議は秘密なのでしょうか。

国家公務員の守秘義務違反が争点となった最高裁判決では、法律上の秘密は、形式秘と実質秘に大別される旨を判示しています。すると、公示される情報は、特段の事情がない限り、実質秘として保護されることがないと解されます。

例えば、特許出願がされた後、出願公開がされる前、その出願内容が公表されたときには、関連発明ないし改良発明に関する特許出願の新規性の有無が全く変わります。弁理士は、守秘義務というと、発明の新規性を中心に考える傾向にあるのですが、常議員会の決議は特許出願の発明と法的性格が全く異なります。

ところで、不正競争防止法に定める営業秘密では、秘密管理性、有用性、非公知性が要件とされています。形式秘と実質秘の区別は概ね有用性に相当する概念になります。

ついでに秘密管理性について検討いたします。

第3回常議員会開催通知に議案が記載されていますが、開催通知に常議員会は秘密である旨は記載されていません。また、昨日に開催された第3回常議員会で、今回の常議員会は秘密にするというようなトピックは一切ありません。すると、常議員会の議案及び決議は、秘密として管理されていないことは明きらかです。

そもそも弁理士会は直接民主制を基盤とする組織であり、総会も常議員会も弁理士会の議決機関になります(注釈)。すると、弁理士会の議決機関が会員に対して情報公開をするのは当然のことであり、常議員会の決議の公示も情報公開という観点から観念することが求められます。

すると、情報公開に資するという観点からも常議員会の決議を公表する行為は全く問題がありません。


注釈:弁理士会の組織について、直接民主制を基盤として、議決機関、執行機関が設けられていると解説する原稿は執筆中であり、そのうちに公表いたします。

 

弁理士会会則抜粋

(常議員会の決議の公示)(見出し改正、平24126臨時)

第80条 常議員会の決議は、10日以内に公示しなければならない。ただし、秘密に属する事項は、この限りではない。(改正、平24126臨時)

2 常議員会の決議の公示は、会報に掲載することにより行う。(改正、平24126臨時)

3 前項の公示は、会報への掲載に代えて、電気通信回線を使用することにより行うことができる。ただし、公示の内容は、遅滞なく会報に掲載しなければならない。(本項追加、平24126臨時)